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日々の考察。

気づかぬうちに冷めてしまったあなたの心

普段あなたはどのような人々と共に生活しているだろうか。

職場の同僚、上司、家族、学生時代からの友人、社会に出てから趣味で知り合った人、など様々かと思う。

既存のコミュニティは恐らく気心の知れた人たちばかりで構成されており、居心地が良いだろう。

すでにそういった場所があるのならなおさら、人、特に初対面の人や顔は知っているがあまり関わったことのない人たちとの距離を取りがちである。

例えば、以下のシチュエーションに心当たりがある人は非常に多いだろう。

  • エレベーターの中で乗り合わせた人と会話するのが苦手

  • 電車で席を譲るのをためらってしまう

  • 他人が何を考えているのかわからないので怖い

  • 外見からして自分とは住む世界が違う

  • 新しいコミュニティに入っていくのが億劫

  • etc...

このように他人と距離ができてしまうのは何故か。

今回は、書籍「特定の人としか上手く付き合えないのは、結局、あなたの心が冷めているからだ」を紹介させていただきたい。

特定の人としかうまく付き合えないのは、結局、あなたの心が冷めているからだ (新潮文庫)

特定の人としかうまく付き合えないのは、結局、あなたの心が冷めているからだ (新潮文庫)

人のことを避けがちなのは、自分の心が冷めているからだ

基本的に人は必要最低限のコミュニケーションで生きていこうとする。

そうすることで無駄な接触を避け、自分を守ろうとしているのだ。

そう考えると、別に人と無理に近づかなくてもいいじゃないかと思ってしまう。

しかし、この度が過ぎると「冷めた人間」になってしまうと著者は言う。

そもそも何故人がこういった行動を取ってしまうのか、それはセルフ・ハンディキャップという心理学の言葉で説明できる。

端的に言えば「自分にわざとハンディキャップを課して、やらない理由、できない理由をつくりだしてしまうこと」である。

  • 私は人見知りだから…
  • あの人はどうせ言ってもわからないよ
  • なんか面倒くさいんだよね
  • そもそも価値観が違うし

このように、人と付き合わない理由をつくってしまうのだ。

しかし、その理由とは本心なのだろうか。

あなたは脳に騙されていないか

人の心は「こうでなきゃいけない」と心の中で思っていることと、目の前の出来事とが矛盾しないようにする、と言われている。

心理学ではこのような矛盾を抱えた状態を「認知的不協和」と呼ぶ。

例えば、以下のようなケースだ。

  • 自分が好きで買った商品の悪い評判を聞いたら、必死にいい評判を見つけて「やっぱり買ってよかった」と納得する。
  • 自分に自信のある人が就職活動の面接で落とされたら、「あの会社とは相性が悪い」「見る目がない」と思ってしまう。
  • 恋人のことを「あんた騙されていよ」と友人に言われたら、「そんなことはない」と愛されている根拠を探してしまう。

人と距離を取ってしまっている理由も、もしかしたら同じように自分を納得させるためだけのものではないだろうか。

あなたが正当に下したと思っている判断は、もしかしたら自分の都合の良いよう無意識に軌道修正したものなのかもしれない。

人に対して無意識に過去の記憶と一致させてしまっている

また、人は物事を判断するとき自分の記憶を材料にするが、この精度はかなり低い。

面接官の例でいえば、人を採用するときは60秒から90秒で大体決まってしまうそうだ。

このときも面接官本人の過去の記憶と照らし合わせ、「この人はあの人に似てるからきっといいやつだろうなぁ」などと判断してしまっているのだ。

つまり、自分が気に入っている人に似ている人を自然と高評価してしまうのだが、これで良い人が採れる確率はなんと2%以下だと言われている。

このように、人間の直感というのは場合によっては役に立たないものであることを忘れてはいけない。

「あの人は自分の苦手だった人に似ているからきっとわかりあえない」

もしそういった理由で距離を取っていた人がいれば、それは何の根拠にもなっていないということだ。

話してみたら存外、あなたの生涯の友人になったりするかもしれない。

感受性は鍛えられる

ではこういった判断に囚われず、冷えてしまった心をまた温め直すにはどうすればいいのだろうか。

それは、エンターテイメントに触れることだ。

身近なエンターテイメントに触れる機会の一例として「読書」が挙げられる。

アメリカでは「読書療法」といって、心の病気(うつやノイローゼなど)を持っている人たちに対して読書をすることで心を治療するというプログラムがある。

カーネギーメロン大学で行われた実験で、読書療法にどれだけの効果があるかを調べる実験が行われた。

8歳から10歳の子どもに半年間で100時間の読書をしてもらい、その前後で脳に変化はあるのかを調査した。

結果、読書をすることで脳の「白質」という情報処理を担当する部位が強化された

つまり本、特に小説を読むことは、自分だけでは体験できないことを想像することで感情が鍛えられ、感情の機微がわかってくるようになるのだ。

冷めるなんていつでもできる

また別の考え方としては、冷めるなんていつでもできるということだ。

文頭で挙げた、人と関わるいくつかのパターンで、実際に行動できる人は少なく、行動しない人の方が多い。

つまり簡単でいつでもできるのだ、冷めるということは。

ならば、エネルギーのある今こそ好機と、思い立ったが吉日だと、体裁を気にせず、他人からの評価を無視し、人や知識、経験との出逢いに奔走してみても良いのではないだろうか。

私の敬愛する漫画家、日本橋ヨヲコ氏も過去の作品のコメントとして以下のように述べている。

誰かが止まってる時、よっしゃ行こかと思わせるマンガが描きたい。だって私は冷めて何もしようとしない人がキライ。冷めるのなんていつでもできる。

せっかく生きてんだから本気が見たい。人の本気が見たいから私は本気でマンガを描くよ。

本気でやるのがカッコ悪いと言われても平気。バカにされても平気。

だってそんなこと言う人よりずっと私、面白い目にあってるもんね。

少しの覚悟と少しの余裕で人生なんかとても愉しい。

日本橋ヨヲコ『プラスチック解体高校』2巻あとがき

最後に

今回は、人の感情の熱い、冷たいに関して、書籍「特定の人としか上手く付き合えないのは、結局、あなたの心が冷めているからだ」から紹介させていただいた。

そもそも自分も同じように他人と距離を取りがちなところは元々あったため、それらが心理学や脳科学的に説明できる現象なんだということはとても良い気づきになった。

人と距離を取ってしまうことは1つの防衛本能ではあるが、それだけを理由にしてしまっていないか。

改めて人との付き合い方について考えさせられた。

日本橋ヨヲコ先生の言うとおり、少しの覚悟(合わない人かもしれないけどどんとこい)と、少しの余裕(もし予想していたような人じゃなくてもまぁなんとかなるでしょ)、さえあれば今とはまた違った景色が待っているのかもしれない。